ガーデン ご紹介

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ライツ・キャリー・マナー   Lytes Cary Manor
               2012年6月11日 訪問  水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。

今日の訪問予定地はA303沿いのアトラクションから選んでいる。次はライツ・キャリー・マナーに遣ってきた。 初めての訪問だ。このロケーションにあって今まで訪れていないのが不思議なくらいだ。ここもナショナ・トラスト(NT)のプロパティーだ。
この20分余りの移動の最中にゲリラ豪雨のような雨だ。さっきまでの快晴が嘘のような雨だ。意外に狭いパーキングは轍に水が溜まり、駐車不能の場所さえある。 小止みになるのを待つ余裕はない、小さな折り畳み傘では役に立たないが気は心、傘を広げて入場する。
入場者は皆ハウスの中に避難しているのだろう。ハウスの東面(East Front)に広がるこのガーデンの名物"Apostle Garden"にも人っ子一人いない。 お陰で良い写真が撮れた(写真下左)。この変わったイチイのトピアリーが使徒(Apostle)を表している。使徒が両側に12人整列しているので”十二使徒の庭”という訳だ。 十二使徒の庭と言えば、どこかで訪ねた筈だ。調べてみると2008年にストラットフォード・アポン・エイボン近郊にあるパックウッド・ハウス(Packwood)に あったのだ。それとは大分趣が異なる。
このもこもこしたイチイもどこかで見たような(写真下中2枚)。この旅でも訪れたモンタキュート・ハウスのとろける生垣だ。 モンタキュートはライツ・キャリーとバーリントン・コートの中間辺りにある。モンタキュートは3回も訪れているのにどうしてライツ・キャリーが初めてなのか、改めて謎だ。
振り返るとグランドに鉄扉(Iron Gate)を透かして鳩小屋(Dovecote)が見える(写真下右)。嘗てはこちらが入り口(House Gate)だったのだ。 その先はキャリー川(River Cary)へ繋がる。このハウスの最初の居住者ライト家(Lyte family)とこの川の名前から"Lytes Cary Manor"と名付けられたという。 この鳩小屋は本当は水道塔(Water Tower)なのだという。"Avebury Manor"のDovecoteに似せて造ったものらしい。

Lytes Cary Manor Lytes Cary Manor Lytes Cary Manor Lytes Cary Manor

十二使徒の間をハウスに向かい、ハウスの前で左に曲がると壁を潜る小さな入り口がある(写真下左)。その先は"Main Border"だ。

ここでライツ・キャリー・マナーの歴史に触れておこう。13世紀から18世紀までライト家(Lytes Family)が住んでいた家で、 一番古い部分は14世紀のチャペル(Chapel)だという。その後各世代に増改築が繰り返されて来た。その後ライト家の財政難で人手に渡り、 お決まりの何人かの手を経て荒れ放題になっていたものをウォルター ・ジェンナー 卿(Sir Walter Jenner)が買取り、ハウスを改修し、 "West Wing"を増築し、ガーデンを改造したのだ。 ライト家の16世紀のヘンリー ・ライト(Henry Lyte)は植物採集者であったという。"Lyte's Herbal"というハーブ療法の本を出版し、 当時のハーブ療法のスタンダードであり、シェイクスピアのロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)の中でも引用されたという。 また、ウォルター ・ジェンナー 卿の父はビクトリア 女王の医者であったという。なかなか役者が揃ったものだ。
ウォルター ・ジェンナー 卿はガーデンを当時大流行していたアーツ・アンド・クラフト形式(Arts and crafts style)にデザインした。 すなわち、アウトドア・ルーム方式のガーデンだ。ウォルター ・ジェンナー 卿は1948年に亡くなり、ハウスとガーデンはNTに寄贈されたのだ。

Lytes Cary Manor Lytes Cary Manor Lytes Cary Manor Lytes Cary Manor

メイン・ボーダーも長さ35m、幅5mほどの壁に囲まれ、通路の両側が2mほどのダブル・ボーダーだ(写真上右3枚、下左2枚)。 1965年にNTの最初のガーデン・デザイナーであったグラハム・スチュアート・トマス(Graham Stuart Thomas)がデザインし直したという。 植栽は壁をバラやクレマチスがクライミングし、スモークツーリやメギなどの銅葉のブッシュも効果的に入っている。 宿根草はまだ開花していないが、1ヶ月もすればさぞやと思わせる生育振りだ。また、場所によってカラーテーマが変えられているようだ。 赤色、ピンク、ブルー、紫、白などのコーナーが見て取れる。
ボーダーを見終わった頃には靴の中は洪水状態だ。そんな雨にも拘らず、NTのガーデナー達は薄手のウインドブレーカーのようなものを着て手入れをしている。 ビックリ仰天。ボーダーの外れを右折すると"Raised Walk"だ。左手に円柱状にトピアリーされたアイリッシュ・イチイ(Columns of Irish Yew)が立ち並び、 右手は"Orchard"が広がっている。果樹園といえども、効率的な生産を目的とする訳ではなく、デザインされている。対角線に通路が敷かれ、 それに沿ってリンゴや洋ナシが植えられている。通路の交点にはサンダイアルが置かれている(写真下右)。 下草はスイセンと野生の草花で早春にはさぞかし美しいことだろう。

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果樹園の対角線を進むとハウスの南面(South Fron)に出る(写真下左)。ライムストーンが美しい。エバーグリーンの芝、段だら模様の舗道、 コントロールされたボーダーと相まって優美だ。中央の出窓部分の1階の居間(Great Parlour)と2階の寝室(Great Chamber)から 眺められるようデザインされた3つのガーデンが南に向かって展開している。
一番手前がクロッケー・ローン(Croquet Lawn)だ(写真下左から2枚目)。白いフープ( hoops 門)が幾つか見える。 2007年の旅でB&Bの家族と楽しんだことがあるが、技術だけでなく、駆け引きもあって楽しいゲームだった。 その様子はこちらからどうぞ。
その南に2つ目の"Lavender Garde"がある。イチイのヘッジで囲われた方形のローン・ガーデンの4つの角に柘植の生垣でデザインされたベッドが切られ、 ラベンダーが整然と植栽されている。花穂が一斉に伸びている。開花も間近だ。南北のヘッジの中央は出入り口、東西のヘッジの中央のベンチが置かれている。 シンプルなガーデンだ。
一番奥に"Pond Garden"がある(写真下右)。ここも方形のイチイの生垣に囲まれた芝生の真ん中に円形の池があり、噴水があるだけで植栽はない。 生垣の4つのコーナーはヘッジにニッチが切り込まれ彫像とコンテナが置かれている。こちらもシンプルにして重厚感溢れるガーデンだ。

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ハウスの南東角に14世紀に建てられたチャペルがある(写真下左)。その壁は一面つる性の植物で覆われている。周囲の植栽も厚い。 写真を拡大してステンドグラスの写真もお楽しみあれ。
West Wingの南にサンクン・ガーデン(sunken Garden)がある(写真下中2枚)。ハウス前より1段低くしたガーデンだ。 上からの見晴らし効果を狙ったものだが、低くした段差への植栽もガーデンに厚みを持たせる効果があるようだ。この拡大写真にもお楽しみが・・・。

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20世紀に建てられたWest Wing(写真下左から2枚目)は現在NTにより"Holiday Cottage"として貸し出されている。その西面のガーデンが"Cutting Garden"だ(写真上下右)。 ハウス内に飾る切花を育てるガーデンだろうが、タイムのベッドで囲まれた(写真下右)銀葉の樹木があるなど装飾的だ。
Cutting Gardenの南の一角はガーデンマップには特別な記載もないが、ホワイト・ガーデンと名付けたくなるコーナーだ(写真下左3枚)。 芝生の真ん中に苔むしたコラムが立っており白色のクレマチスが程よくクライミングしている。周囲の植栽は控えめながら白が基調ですっきりしている。好みだ。

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懸案のウォール・アーチの梱包用の段ボール箱を求めてショップに入ると同じウォール・アーチが置いてある。「別のNTで求めたものだが、 あれと同じものを梱包できるようなダンボールはないか?」と訊ねると裏の倉庫に案内され探してくれたが、大きなダンボールがない。 もう待ったなしだ。やむなく隅にプチプチシートが沢山積まれていたのでそれをいただいた。ご親切ありがとう。
雨は相変わらず降り続いている。パーキング横に年代を感じさせる納屋の跡のような建物があり、雨はしのげる。。その下でランチをしている人がいる。 こちらの方はサンドウィッチなど持って道路脇などで気軽にピクニックを楽しむが、今日は雨のためここを借りているのだろう。 車の中で梱包するつもりだったが、ここを拝借しよう。車から旅の常備品の梱包セットを取ってきて、セロテープとビニール紐でガッチリ、パッキングする。
これで懸案解決。空は重いが、心は軽く、ストーンヘンジに向け出発。

Information
 Address  near Somerton, TA11 7HU
 Telephone  01458 224471
 Web Site  Lytes Cary Manor

オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは Gardens Finder
Gardens Guideで確認ください。

「旅行記」もご覧ください。

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